合コンに現れたいちばん変な人と、最終的に結婚した話.5-最終話-
それからは特にドラマチックなことも、どちらかが正式に告白するなんてこともなく、気付いたら同棲。
グループで集まっていた合コンメンバーとは、自然と距離が出来た。
一緒に住んでみたら現夫はやはり変で、謎のこだわりや習慣が多すぎて。
インドア派なんだか、アウトドア派なんだかも、よく分からないし。
分からないことだらけで、ついでにプロポーズも、トキメキもないのに。
妙に居心地だけはよくなっていた現夫と、大学を卒業してから数年後。
結婚する運びになっていました。
結婚してからも、相変わらず変で、ダサくて、ズレてて。
新婚旅行では、「現地では別行動でいいかな?」と真顔で言ってきて、ひとりで海外の海のツアーに参加しようとしているし。
中学生の時の服を、いまだに着てるし。
でも、家事や家庭の面倒なことからは逃げないし、仕事も頑張るし、全てをそのまま受け入れてくれる性格の彼は…
今は、2人の娘の父親となり。
いまだに海の生き物を愛して止まない、誠実な男です。
合コンに現れたいちばん変な人と、最終的に結婚した話.4
でもとにかく、申し訳ないが、本当に顔や外見が好みじゃなかった。
中肉中背だけど、服のセンスが壊滅的すぎて、隣を歩くのも恥ずかしかった。
大人しそうだから、一見優しいのかと思いきや、「普通、慰めてくれるよね」とか、「普通、良いように言ってくれるよね」という、こちらの思う「普通の会話」が成り立たなくて。
良くも悪くも、常に「自分の言葉」で返してくる感じが、うっとうしくもあった。
たまたま人間関係のことで悩んでいて、一方的に相談…というか、愚痴のつもりでしゃべり倒したら、現夫はそのままフリーズしてしまうし。
かと思ったら、数時間後にメールで、
「よく分からなかったので、検索してみました。似たようなことで悩んでいる人がいるようなので、参考になればと思って」
と、ネットの悩み相談掲示板のURLを送ってくるし。
URL、いらん!!と、その時は、本当に頭にきたけれど。
例えば大学や地元の友達や、バイト先の仲間や…
現夫以外の、当時私の周りにいた人たちは、大抵みんな優しくて。
欲しい言葉をくれて、励ましてくれて、感謝していた…けど。
正直、自分の損得で相手への態度を変えたり。
自分が大変になりそうなことは、うまく避けてたり。
言葉だけは優しくて、行動は伴ってなかったり。
もちろん私にもそういうところはあるんだろうけど。
なんかうまくやってるな、ずるいな、って感じてしまうところもあったりで…
耳障りのいいことばかり言うわけじゃないけれど、自分の言葉で話してくれる。
口だけじゃなく、ちゃんと行動を伴っている現夫と。
恋愛感情抜きで、2人で会うことも多くなっていった。
合コンに現れたいちばん変な人と、最終的に結婚した話.3
しかし、現実は思いもよらぬ方向へと転がり。
現夫との出会いの場となったその日の合コンで、偶然にも、意気投合した男女がいた縁で。
後日何度か、グループで顔を合わせた。
飲み会をしたり、お花見をしたり、一泊でキャンプに行ったこともあった。
現夫は、女子たちからは全く異性として意識されておらず。
私は私で、徐々にグループのノリについていけなくなってきていて。
不本意ながらも、なんとなく浮いているもの同士、2人で話す機会も多くなっていった。
そこで分かったのは…
現夫は、常に気分が安定している、ということ。
現夫は、どんなに嫌なことがあっても深刻になりすぎず、暗くならない。
楽しい時には、多少テンションが高くなることはあるけれど、ハメを外しすぎることもない。
不機嫌を撒き散らしたり、構ってちゃんになったり、誰かに八つ当たりなんて、もっての外。
気を利かせたり、お世辞を言ったり、空気を読むことは得意ではないけれど。
安定して、穏やかな人。
合コンに現れたいちばん変な人と、最終的に結婚した話.2
現夫は、
「ねえ、洋服ってどこで買ってるの?」という質問には、 「洋服はあまり買わない」
と、至って普通のトーンで、真顔で返し。
髪型をイジられれば、「床屋で普通に切っているだけ」 と言い放つ。
「メガネが変!」と笑われても、「あまり言われたことないな」と返すのみ。
なんとなくオタクっぽさを醸し出しているので、話を広げるために、誰かがアニメの話題を出すも。
彼は、オタクはオタクなのだが、興味の対象が、アニメやゲームのような、ある意味わかりやすいものではなく。
得意分野は「海の生き物」という、共感し辛いもの。
要するに、見かけは何となく面白い感じでもあるが、実際話しかけてみると、
「別に面白いことを言うわけじゃない人」
女子たちは完全に興味を失い、現夫はあっさり空気と化した。
故に、その後の合コンの時間中、彼がどうしていたのかは、全く記憶にない。
ちなみに現夫の、私の第一印象は…
「中学の時にクラスにいた女の子に似てる」だったらしい。
とにかく、もう二度と会うこともないだろうと思っていた現夫と、後に、まさか結婚まで至るなんて。
この時は想像すらもしていなかったのだ。
合コンに現れたいちばん変な人と、最終的に結婚した話.1
大学生の時。
地味で冴えない高校時代を過ごした私は、とにかく…浮かれていた。
楽しまなきゃ損!
若いうちに遊ばなきゃ!
まるで追い立てられるように、バイトや、遊びの予定を入れまくっていた、ある日。
バイト先の友達に、 「いろんな大学の子が来るから」と誘われた、大学生同士の合コンで。
私は、彼…現在の夫に出会った。
よく、
「出会った瞬間に、絶対この人と結婚すると思った」とか。
「ピンときた」とかいう話を聞くけれど。
私と現夫には、そんな予感めいたものは、何ひとつとしてなかった。
だって、現夫の第一印象は…
まず、ダサい!
服がダサい。髪型がダサい。かけている眼鏡がダサい。とにかく、ダサい。
中学生男子が、そのまま大学生として現れた感じ。
遊びたいさかりの女子大生が、一見して、「コイツはない」と見切りをつけるタイプ。
そして、少し意地悪な女子からは、「イジっていい人」と認識されるタイプ。
…が、現夫は、面白いイジられキャラでもなかった。
幼稚園の勘違いパパにうんざりした話.6-最終話-
その後、いろいろバカらしくなったので、私はAちゃんパパとは今以上に距離を置き、線を引いてお付き合いするようになりました。
Aちゃんパパが一緒に公園について来たら、先に帰る。
娘が遊びたがったら遊ばせて帰るけれど、Aちゃんパパとは話さない。
近付いてきたら、離れる。
挨拶は立ち止まらず、雑談は相槌のみ。
幸い娘とAちゃんもそれほど仲良くはなかったので、全く問題はありませんでした。
特に示し合わせたわけではありませんが、他のママたちも同様の態度になって行き…
さすがに察したのか、徐々にAちゃんパパも、以前ほど近付いてくることはなくなりました。
結局のところ。
こちらは保護者として接しているだけなのに、現状以上の接点を求めてグイグイくるAちゃんパパに対する嫌悪感が、本当に強かったです。
ちなみにその後。
Aちゃんパパから、頻繁にラインが来て困っていた、だの。
Aちゃんをダシに、個人的に遊びに誘われていた、だの。
偶然を装って、ママ達がお茶しているところに現れて驚いた、だの。
複数のママたちから、Aちゃんパパへの不満が出るわ、出るわ。
もう二度と関わりたくない、勘違いパパでした。
幼稚園の勘違いパパにうんざりした話.5
「楽しかったですねー、また飲みましょう!」
飲み会後初めての、幼稚園のお迎えの時。
嬉々とした笑顔で語るAちゃんパパの背後から現れたのは…
Cママでした。
「聞きましたよー、Aちゃんのお父さん、お母さんたちだけの飲み会に行ったらしいじゃないですか! よく行けますよねー。
うちの旦那が行きたがったら、私だったら引っ叩いてでも止めますけどね!」
上に小学生の子供が複数人いるCママは、
あっけらかんとした人で、みんなが言い辛い発言もズバズバ出来る、ある意味KYな人。
Cママを苦手としているママも多いのですが、この時ばかりはCママに感謝でした。
「い、いや。Aの相談にも乗ってもらいたかったので…」
「幹事のDさんに頼んで、急遽参加したんですよね? Dさん、優しいから断れないタイプなんですよ。
女同士の話が出来ないし、気を使うから、Aちゃんのお父さん、もうズカズカ女の中に入って行くのは、止めた方がいいですよ!」
「……」
「お母さんたちが優しいのは、社交辞令ですしね。間違っても、真に受けて勘違いしちゃダメですよ?」
「……」
Cママにゲラゲラ笑いながらもピシャリと言われ、見る見る顔が強ばり、不機嫌になっていくAちゃんパパ。
かなり年上の中年男性が、目を吊り上げ、唇を尖らせ、不貞腐れている様は、異様でした。